ニューロダイバーシティ(脳の多様性)とは、私たちは皆、異なったように考え、行動し、反応するということです。異なった視点やアプローチによる恩恵を認識しておくことは、より良い決定を行う際に不可欠です。しかし、違いは対立を生むこともありますので、それをどう管理したら良いでしょうか?
脳の多様性による対立は良い対立である
正直なところ、「対立」について考えるとき、あなたはひどい経験につい連想するのではないでしょうか。この言葉は、ポジティブで活力の湧くイメージを感じさせません。
ヒートアップしすぎた口論で、怒鳴られたこと。会議中、同僚の前でけなされたこと。もしくはあなたの子供のかんしゃくに叫び返してしまったこと。対立は、たとえ短時間であっても、双方にとって苦痛です。
では、想像してみてください。あなたの感情的な反応が、一時的なものではなかったらどうでしょうか。代わりに、あなたは人生の間、ずっと対立し続けてきたと思ってください。あなたの意見は常に「変わっている」と言われ、その説明は「普通」とは違っているとされてきました。そして、あなたはいつも「間違った」ことを言ってしまうのではないかとハラハラしています。
そう考えると、対立を避けるために全く何も言わずにいようとする人が居るのは無理からぬことです。
心理的安全性を築く
好奇心旺盛なコーチングマインドを働かせると、そこには「たった一つのベストな方法」はないことを積極的に認めることになります。あなたが他者に批判されない、心理的安全性のある環境を構築することで、皆が自由にそれぞれの考えを共有(「他には?」「それについて、他にあなたが言えることは?」)し、機会やリスクを確認できるようになります。そしてあなたは、アイデアを共有し違いを認めることはどちらも歓迎されるというようなアプローチを堂々と採用するのです。
今までとは違うやり方にこだわって下さい。そうでないと、現状を変えることを怖がる「イエスマン」のような人ばかりになってしまいます。
ニューロダイバーシティの実践とは?
最高経営責任者(CEO)が何も書き留めないタイプで、代わりに、歩いて話すのを好むとしましょう。そのため、彼女は最高執行責任者(COO)とおしゃべりをしながら、忙しいオフィス内をぶらぶらと歩き、それぞれのデスクに戻ります。
背後では、電話が鳴り響き、コピー機が音を立てて動いています。何人かが昨夜のサッカーについて大声で話していて、オフィスの右端では蛍光灯がチカチカと点滅しています。
CEOの方は問題ありません。彼女はおしゃべりをしながら、自分の頭の中から考えたことを引っ張り出して、COOにやってもらいたいことについてどんどん伝えていきます。しかし、彼は集中するのに必死です。
COOのストレスが高まるにつれ、心拍数も上がっていきます。彼は必死に集中しようとしますが、騒音、フットボールの話、点滅する蛍光灯が邪魔をします。CEOの言うことを全て聞きとることは不可能ですし、ましてやそれを後で行動に移すことなどできません。
こうしたことが、将来の衝突のもとになります。
コーチングを役立てるには?
企業文化がオープンで共有する文化を奨励している場合、人々はより進んで自分のニーズや好みを主張出来るようになります。コーチング中、COOは、歩きながら話をするのは難しい、と話しだします。メモが取れるような、静かな場所に座って話をすることが出来れば、彼はもっとずっとうまくやれると言います。あなたは、「それについて何かできることはありますか?」と尋ねます。
彼は、CEOはオフィス内を歩き回る必要はないが、最高の思考をするためにデスクから離れる必要があるのを理解していると言います。コーチングを通じて、COOは自分のニーズを無理なく発言できる方法を見つけます。COOは、CEOが自分の意見を大切にしていることを知っていますが、それとは異なるアプローチが必要であることも認識します。
コーチングを通して、COOはこの件について何かしたいと決意し、その行動にコミットします。そして、彼とCEOは「大きな会議室に行く」という妥協案にたどり着きました。
彼女は引き続き歩き回ることが出来ますが、彼はメモをとることができます。そうすることで、彼は重要なポイントを確認し、質問することが出来ます。そして重要なことに、これはどちらにも利益があります。
ニューロインクルーシブな環境を構築するということは、一方が正しく、他方が間違っているという従来の対立観に立つのではありません。その代わりに、コミュニケーションや学習スタイルの違いがもはや障害とならない場を育てるのです。それは成功を確実にするための手段なのです。
ニューロインクルーシブであることが文化を向上させる
ニューロダイバーシティに関するコーチングアプローチを取り入れたビジネスでは、これまで考えたことのなかった異なる視点により、イノベーションの改善が見られます。また、個人の貢献を評価し、燃え尽き症候群のリスクなしに潜在能力を最大限に引き出そうとするインクルーシブな文化の恩恵も受けることができます。
結論として、好奇心を持ち(「それはどういう意味ですか?」)、ビジネスに対してニューロインクルーシブなアプローチをとることで、人々は自分の意見を聞いてもらえたと感じることができるのです。そして、評価されていると感じることの重要性とビジネスパフォーマンスの向上については、何百もの研究があります。
ですから、社員の能力を最大限に引き出したいのであれば、違いを積極的に探しましょう。それを奨励し、促進し、「ベストな方法は一つではない」という考えを大切にするのです。一つだけの答えを探す代わりに、異なる考えを持つ人々が提示する無数の選択肢を楽しみましょう。