コーチングとは、人を助ける職業ですが、私たちの世界は変化しています。私たちの集団意識が新たなレベルに達するにつれ、期待の変化がエグゼクティブ・コーチングの分野に劇的な影響を与えています。かつてはプロフェッショナルとしての目標達成に主眼が置かれていたエグゼクティブ・コーチングは、現在では仕事における目的、意義、そして最高の可能性を見出すための内省的な旅を促進するものとなっています。
実際、ICFはコーチングを「… 個人的および職業的な潜在能力を最大限に引き出すために、クライアントを刺激する思考的かつ創造的なプロセスにおいて、クライアントとパートナーシップを組むこと」と定義しています。
アブラハム・マズロー、カール・ロジャース、カール・ユングなど、人間の可能性に関連する高名な人物は、かつて心理学の教科書に追いやられていましたが、彼らの理論の実用化が今日のプロフェッショナルな傾向の中で、ますます関連性を増しているため、ビジネスの世界で復活を遂げようとしているのです。
自己実現のパラドックス
私は25年以上にわたって、人間開発とリーダーシップに焦点を当てた研究を行ってきました。クライアントが、その最大潜在能力に到達し、実現することを助けるために当てはまる普遍的な格言があるとすれば、それは次のようなものです。：
「自分の最も明るい光と最高の可能性に到達するためには、自分の暗闇を受け入れなければならない。」
このように、総合的な自己認識の「方程式」、つまり自分の強みと限界を知ることは、私たちの最高の可能性を実現するために不可欠なのです。
実現されたリーダーシップのフレームワーク
実現されたリーダーシップのフレームワークとは、人間の発達とモチベーションに関する主要な思想家や理論を、人々が自己認識を深めることを支援するためのシンプルで実践的なアプローチに整理・統合しようとする、私の意図なのです。このアプローチから生まれる3つのスタイルと、それに対応する3つの「リーダーシップの影」があり、それらは個人がその潜在能力を最大限に発揮するために認識され、統合されなければならないものです。
達成者型（Achievers）
達成者型は、主に達成と承認への強い欲求から行動する人たちです。組織化され、細部にまでこだわり、成功のために行動する人です。達成者型人材の多くは、会計士、技術者、営業マンとして優れています。
しかし、「失敗を恐れるリーダーシップの影」が活性化すると、上記のような強みが内在する限界になってしまいます。ストレスがかかると、達成者型は非生産的な方向に変化します。組織的であることが硬直的になり、細部にこだわることが強迫観念となり、専門知識がマイクロマネジメントになるのです。このようなことが起こると、経験が失敗を上回らない限り、達成者型は人為的に自分の成功やキャリアの軌道を制限する可能性が実際に高くなるという、実存的かつ皮肉な悲劇になります。
賛同者型（Affirmers）
賛同者型は、人間関係を重視する人たちで、所属とつながりを強く求めています。多くの点で、彼らは組織内で私たちを結びつけ、まとめる社会的な接着剤のような存在です。賛同者型は、温厚で親しみやすく、忠実で、他人を深く思いやることができる人であり、多くの場合、人事、研修・開発、コーチングなどの役割を担う優れたチームメンバーでもあります。
これらすべて、そして他の多くのポジティブな特徴が賛同者型の中に常に存在する一方で、「拒絶を恐れるリーダーシップの影」が活性化すると、ダークサイドが出現します。この場合、親しみやすさが衝突回避に、他人への配慮が過剰な融通に、そして異なる意見や見解を管理しようとすることが優柔不断につながります。そして、達成者型と失敗に関連する実存的で皮肉な悲劇のように、賛同者型は自分のリーダーシップの影に管理されると、彼らが恐れる拒絶を経験する可能性が高くなるのです。
断言者型（Asserters）
断言者型は、主に支配欲と権力欲から行動する、自信に満ちた率直な人たちです。高層ビルを建設するエンジニアや、戦争を遂行する軍のリーダーであることも少なくありません。戦略的思考を持ち、断固とした意思決定を行う断言者型は、COO、CFO、CEOなど、Cのつくひとそろいの人々の中に、しばしば見受けられます。
しかし、この自信と率直さにはダークサイドがあります。傲慢さと無遠慮さが「裏切りへの恐怖のリーダーシップの影」に結びついて存在しているのです。この影が活性化すると、その結果としての「正しくありたい」という願望と、それに続く相手を見下したような口調が、断言者型にとっては裏切りと感じるような別離を導くことがよくあります。
潜在能力を最大限に引き出すコーチング
コーチとして、私たちはクライアントが自分の暗闇を認め、受け入れ、そうすることで自己実現につながる統合への旅を始めるのを手助けするユニークな機会を持っています。カール・ユングの有名な言葉に、私たちは「光の姿を想像する」ことによって悟りを開くのではない、というものがあります。むしろ、「闇を意識化する」勇気を持ったとき、私たちは最高の可能性を実現することができるのです。私たちがクライアントにこのような気づきを促すとき、自己実現のプロセスに内在するパラドックスの力を目の当たりにすることになるのです。
