人間行動の不具合やネガティブな側面のみに心理学が注目する、という認識と袂を分かつ方法の一つとして、マーティン・セリグマンが1998年、正式に「ポジティブ心理学」(人類繁栄の科学)を発表してから20年以上の月日が経っています。「ポジティブ心理学」は、その対象分野を、繁栄や幸福、人生の満足感、楽観主義、希望、流れ、活力、用心、好意的な人間関係など、多くの論題を含んだ最適な人間の振る舞いについてのさらに建設的な概念に向けて、動かしています。
それ以来、ポジティブ心理学は、コーチや実践者、指導者や教師の間に於いて、急速な成長と勢力の拡大を経てきました。クライアント個人やグループ、そしてチームを繁栄させ、成長させる手助けの手段として、コーチングのアプローチ(例として、性格強化、PERMAモデル、感謝、最大自己実現訓練など)と共に使われているポジティブ心理学介入(PPIs)と呼ばれるツール、アセスメントとリソースを通じて、ポジティブ心理学は運用されています。ポジティブ心理学とコーチングの組み合わせは、2007年にロバート・ビスワズ−ディエナーによって紹介されているように「ポジティブ心理学コーチング(PPC)」として、一般に知られています。
現在、ポジティブ心理学をコーチングのアプローチに応用することから、科学に基づくPPIs(ポジティブ心理学介入)でコーチングに重ねることまで、PPC(ポジティブ心理学コーチング)の実践に、さまざまな解釈が存在します。しかしながら、現在の形態のPPC(ポジティブ心理学コーチング)は、その方程式にもう一つ別の要素が欠けています。それは、コーチング心理学、すなわちコーチングの応用を支える科学・調査・理論として理解されるものを正式に加えることです。
コーチング心理学はまた、れっきとした強力な学問分野であり、アンソニー・グラントによって2000年に正式に発表されて以来顕著な成長を経験してきました。この成長とは、どのようにして心理学の理論を正常に機能している成人に実際に適用するかについて、多くのコーチング実践者が持っていたフラストレーションに応えて、シドニー大学でコーチング心理学ユニットを作ったことを含んでいます。
コーチング心理学の応用は、「実証ベースのコーチング」を通じて説明されています。2017年の国際調査によれば、コーチング実践者に使用されるいくつかのトップレベルの実証ベースのアプローチに、認知行動コーチングやソリューション重視の認知行動コーチング、ソリューション重視のコーチング、ポジティブ心理学、神経言語プログラミングなどがあります。
なぜ統合的アプローチをPPC(ポジティブ心理学コーチング)に取り入れるのか?
学界や研究者、実践者たちは、ポジティブ心理学とコーチング心理学が相互補完の分野であると考えています。なぜなら、両者とも繁栄や成長、理想的な人間の潜在能力や機能に注目するからです。そのように、コーチングの中でそれらの統合を求める声があったのです。(例えば、ポジティブ心理学コーチングへの新しいアプローチなど)しかしながら、実践者や研究者を導く為にもっと明確に表現する試みがあったにもかかわらず、現在は統合を進める固有のアプローチが欠けているのです。
ポジティブ心理学やコーチング心理学の科学的分野が実証ベースのコーチングの応用に統合される際には、実践者が全体的かつ強力な方法で人間の繁栄や幸福をもたらす助けとなるよう、ポジティブ心理学とコーチング心理学の双方の分野の最高のものをつなぎ合わせるとてつもない可能性があります。
コーチや実践者、指導者たちは、そうして彼らの顧客、チーム、組織や彼ら自身の人生の幸福や繁栄にさらに大きなインパクトをもたらすことができるでしょう。
PPCへの統合的アプローチの利点とは何でしょう?
この新しい統合的なアプローチは「実践的ポジティブ心理学コーチング(APPC)」と呼ばれており、それはコーチがさらに知識やスキル、ツールを開発し、個人の成長を経験し、持続可能なコーチングの実践を作り上げてゆくのを助けるのと同様に、コーチングの科学にさらなる利便性をもたらすポジティブ心理学コーチング(PPC)に於ける次世代の波です。
APPCの他の重要な利点:
- ポジティブ心理学コーチングはコーチングの分野に、実証に基づいた干渉や評価、テクニック、方法を加えることになります。このことは、コーチや実践者が自信を持って、科学的に認められた戦略やテクニックを使うことができることを意味します。
- さらに、APPCの範囲のコーチや研究者、教師、実践者たちにガイダンスを与えることになります。APPCの定義は、繁栄や可能性、力強さ、パフォーマンスとゴールの達成を強化するため、科学とポジティブ心理学・コーチング心理学の実践とによって周知された実証ベースのコーチングの応用と理解され得ます。
- APPCはポジティブ心理学とコーチング心理学の間の知識と実践のギャップを埋め、コーチングの会話の中で、どのように統合的な方法で効率よく適用するかについて、ガイダンスを提供します。
- コーチとクライアントの双方とも、満足と最適機能への混合アプローチを経験できます。これは、回復、感謝、許しなど、さまざまなポジティブ心理学研究を使って達成されます。その研究は、クライアントの心理的な満足を支持する為に、認知行動コーチングやソリューション重視のコーチングなど、色々な実証ベースのコーチング・テクニックと結び付けられています。
実践的ポジティブ心理学コーチングは、新興の領域であり、コーチや実践者、指導者たちがこのコーチングの実務や繁栄を強化する役割を理解すればするほど、この統合的アプローチがコーチングの分野にとってなくてはならない部分であると証明されるでしょうし、また実際に既に証明されつつあります。
実践的ポジティブ心理学コーチングについてさらにもっと学ぶ為に、パート2である「ポジティブ心理学に於ける次の潮流を利用する3つの方法(日本語翻訳版も近日公開予定)」を引き続き参照して下さい。
© Meriflor Toneatto