昨今、パブリックスピーキングのためのリソースや、上手なスピーカーになるための具体的なヒントがあふれています。しかし、どうやって上手な聴き手になるというのでしょう?あなたはなりたくありませんか?
スティーブン・コヴィーの著書7つの習慣(原書名:The Seven Habits of Highly Successful People)の中の第5の習慣に、“まず理解すること。それから理解される。”とあります。これは、“まず聴き、それから話す”とも言えます。コヴィーは「人は会話の間にもたびたび話を聞いていない。その代わりに話し、アドバイスをあたえ、意見する。」と解説しています。その理由として、私たちは聞いた話を自分たちの経験を関連付けてしまい、相手側を理解する方向への努力をしていないからです。にも関わらず、やはり能動的な聴き方と理解力は、ビジネスや人生において効果的なコミュニケーションのキーなのです。ヘンリー・キムジーハウスとキャレン・キムジーハウスはコーチング・バイブル(原書名:Co-Active Coaching)の中で、3つの傾聴のレベルとリスニング力を育てる方法について説明しています。
レベル1
レベル1の傾聴は、聞き手が自分自身の考えや意見、判断、感情にフォーカスしている状態を指します。人は、耳から入った言葉を自分の経験やニーズに結びつけます。このタイプの聴き方は、何らかの決定事項に直面していたり、情報を収集したりする必要がある時には適しています。例えばもし車を買うとしたら、私たちはその車の特徴が希望や予算に合っているか、セールスマンの話をレベル1で聴くことでしょう。
レベル2
レベル2の傾聴は、コミュニケーションを大きく発展させる聴き方です。聴き手は絶えず話し手や会話に意識を向けています。これは、単に発した言葉を聴くということだけではなく、どんな風に言っているのかにも意識を向けます。声のトーンやボディランゲージ、顔の表情などにも注意を払うことを含みます。これは、コヴィーのいうところの「共感による傾聴(Empathic Listening)」の概念であり、言い換えや言葉の反映が含まれています。
聴き手は、心の中のおしゃべりや周囲の邪魔なものを濾過して聞くことができます。発した言葉の意味を聴き取り、応答する方法を選択し、話し手に起こる反応をさらなる情報として聴き取るということです。レベル2の聴き方は、プロフェッショナルコーチがコミュニケーションで使うスキルですが、ヘレンとキャレンはさらにその先があると言います。
レベル3
レベル3の傾聴は、会話にまったく新しい認識をもたらします。レベル2ですべてを包み込む聴き方をしますが、加えて直感力を使い、開放的に、そこに現れているどんなことからもより多くの情報を開放的に受け取ります。この意味は、会話だけではなく、まわりも含めて感じとるということです。
直感は確固たる事実に基づいてはいないため、直感を使うというと勘違いされるかもしれません。直感の概念とは実のところシンプルで、コミュニケーションにおける素晴らしい強みとなりえます。もし相手の話を聞いている時にもしあなたの勘が働いたなら、それを伝えるかどうか考えてみましょう。そして、その直感が正しかったどうかではなく、話し手に起こる影響を観察し、会話が次にどうなっていくのかを感じましょう。例えば「結果に満足しているとおっしゃっていますが、私はあなたの心には何か別のものがあるように感じます。」と言ったなら、「いいえ、そんなことはありません。」や「はい、実は、私たちのプロジェクトに起こり得る問題について話したいと思っていました。」のような返答があるかもしれません。それは、あなたが正しいか正しくないかには無関係のもので、大切なのは、会話に何が起きるかです。
聴く技術を磨いていくには時間が必要ですが、日々、練習することができます。この技術は、交渉事や説得時に特に役立ちます。信頼と理解を築くからです。大切なのは、理解と賛成は違う、ということです。あなたは、相手と同じ意見ではなかったとしても、相手の考え方を理解するようになるでしょう。良い聴き手になる利点の一つは、より多くの情報を得てヘルプフルで効果的なやりとりができることであり、会話をさらに展開していくことができるのです。