ICFでは年に4回、コーチングワールド(CW)という情報誌をオンラインとpdfで発行しています。オンライン版であれば、会員でなくとも、誰でも自由に閲覧することができます。
ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください。
今回は、2016年2月号から、牧野内正雪氏に翻訳いただきました『習慣を変えることで、人生を変える:グレッチェン・ルービンのQ&A』の記事を御紹介します。
習慣を変えることで、人生を変える:グレッチェン・ルービンのQ&A
2009年のベストセラー『The Happiness Project(邦題:人生は「幸せ計画」でうまくいく!)』の発表以来、著者グレッチェン・ルービンは、人がもっと幸せで、健康で、建設的な人生を送れるように、歴史、社会科学、脳科学などさまざまな分野に渡り、研究をベースに理解を深めようとしてきました。
2015年末に発売になった彼女の最新の著書『Better than Before』では、ルービンは日々の習慣形成の技術と科学について探り、あなたが前に進むのを妨げる悪しき習慣を変えるために、誰でも実行可能な戦略を示しています。このインタビューでは、その原則や戦略を、コーチがクライアントや自分自身を理解するのに役立てられるよう解説していただきました。
コーチングワールド(以下CW):『Better than Before』では4つの傾向についてのフレームワークを紹介されていましたね。コーチングワールドの読者のために、そのフレームワークと、それぞれの傾向について説明していただけますか?
グレッチェン・ルービン(以下GR):新しい習慣を形成しようとする時、私たちは自分自身に何らかの期待をしますよね。でも、そのためには期待に自分たちがどう応えるのかを理解しておくことが不可欠なんです。私たちは、2つのタイプの期待に直面します。外的な期待(仕事の締め切りに間に合う、交通規制を順守する、など)と内的な期待(昼寝をするのを止める、新年の決意を守る、など)です。
Upholders(後援者)は外的、内的、両方の期待に難なく応えます。「私は他の人たちに期待されることをやります-そして、自分自身から期待されることも」というタイプです。
Questioners(質問者)は全ての期待に対して疑問を投げかけます。そして彼/彼女がそれが理にかなっていると感じた時(それが内的な期待に適う時)のみその期待に沿おうとします。「私は私の判断でベストだと思うことをやります。意味のないことはしたくありません。」というタイプです。
Obligers(義務者)は外的な期待に応えることは進んでしますが、自分自身の内的期待に応えることは苦手です。「私は他人を失望させたくありませんが、自分自身を失望させてしまうことがよくあります。」というタイプです。
Rebels(反抗者)は、外的、内的共に全ての期待に抵抗します。「私は私のしたいことを自分のやりかたでやりたいです。他人からやれと言われると、やる気がなくなります。」というタイプです。
CW:あなた自身の傾向を知ることが、何故自分自身の習慣を変えるのに不可欠なのでしょう?
GR:私たちが自分自身の傾向を知ると、習慣を変えるためにどんな戦略が有効か分かってくるんです。例えば、後援者はスケジュール的な戦略が、質問者には明快な戦略が、義務者には責任についての戦略が、反抗者にはアイデンティティーに関する戦略が有効というふうに。
CW:研究をしたり書いたりしている時に、どんなことに最も驚きがありましたか?
GR:私は当初、多くの人に認められているような、その習慣の「エキスパート」が不可欠だと思っていました。でも、実際に一番大切なのは、私たち自身を理解することの方でした。
あなたの習慣を変えるのには、この程度のアドバイスで十分なんです。小さく始めよう! 大事なことを朝にやろう! 自分にごほうびをあげよう! 節度を保って!
魔法の答えを見つけるのは難しいですが、(自らの経験から私たちの誰もが知っているように)誰にでもフィットする万能の答えがないことはひとつの事実として分かると思います。ですから、私たち一人ひとりが、何が自分に合うのかを自覚する必要があります。
キーとなる自分の性質を把握することができれば、私たち自身の特性に合わせた習慣を作り上げ、自らを成功に導くことができるようになります。『Better than Before』では、習慣を変えるためのたくさんの戦略について挙げ、人の特性によってそのどれが上手く作用したり、失敗しやすいのかについて解説しています。
ある習慣がベンジャミン・フラクリンやテイラー・スウィフトに合っているからといってあなたに合うかは別の話しですよね。他の例ですか? 朝型と夜型の人が挙げられるでしょう。理論上では、一番大事なことを朝の内にやるのは効率的ですね。でも、もしあなたが夜型であれば、あなたがエネルギーで満ちているのは一日のもっと後の時間になります。もしあなたの新年の決意が「1時間早く起きてエクササイズをする」だった場合、これは成功に向かう習慣とは言えないでしょう。何故ならあなたは夜型なのですから。
CW:一人ひとりが習慣の変化を継続的なものにするにはどうしたら良いですか?
GR:『Better than Before』では、私たちの今の習慣を打ち壊すための21の戦略を打ち出しています。21というと、結構な数ですが、これだけあると、一人ひとりがたくさんの中から自分に一番合っていそうなものを選べるかと思います。ある人は小さく始める方が合っていますが、そうでない、大きく始める方が合う人もいます。ある人は公の場にその習慣を持っていくほうが合いますが、そうでない人は、習慣をプライベートなものに留めて置くほうが良いこともあります。私たちは、何が自分自身にとって真実なのか、どの戦略が合うのか、見定めないといけません。
CW:習慣について知ることは、コーチがクライアントにより良いサービスを提供するのにどう役立ちそうでしょうか?
GR:人が他の人とどう違うのか、あるいはどう同じなのかを理解することで、私たちは自分たちのメッセージを、彼らのニーズにより合わせて行くことができるようになります。特に義務者は、内的な期待に応えるために、外的な期待を必要とします。コーチとの協同は外的な期待を得るための素晴らしい手段になります。実際、外的な期待がある場合、義務者は習慣を維持するのに素晴らしい力を発揮しますが、それがないと困ってしまいます。何度も私はこういう言葉をいただいてきました。「やっと分かりました、私は義務者だったんですね。外的な期待を自分にかけるにはどうすれば良いか分かったので、ジムに行くこと/絵を定期的に描くこと/薬を飲むこと/家からランチを持ってくること/ビジネスをスタートすることを、始めて自分でうまくやることができました。」とね。
それに対して、質問者は疑問に対しての答えを求めています。ですので、コーチの役割は責任を与えることよりも、研究などの基礎固めをし、あるアクションを起こす必要性がどうしてあるのかを説明することが必要になってくるでしょう。質問者は「何故か?」を知りたいのです。
そして反抗者は、そうですね、彼らはなんでも自らの望むことをして構いません。そこでのコーチの重要な役割は、彼ら自身のアイデンティティーを思い出させ、それをしたいという欲求は何のためにそれをしたいと思ってのことなのかを問いかけることになるでしょう。
CW:コーチングワールドでの我々のテーマは、ビジネス開発になります。どのコーチも彼/彼女のビジネスを成長させたいと思っていますが、多くの人がその実現に困難を感じてもいます。コーチは、『Better than Before』の原理をビジネス開発にどう役立てることができますか?
GR:戦略は21ありますから色々な可能性が考えられます。
- モニタリングの戦略を使って、ビジネスを成長させるために、実際にはどれだけのことを行っているか確認することができます(私たちは有効なことをどれだけ行っているかについて、自らを過大評価しがちです)。
- 責任の戦略を使って、特定のターゲットや目標を達成するための責任を保つことができます。
- 土台づくりの戦略を使って、自分のコントロールを高めることができます。疲れている時や、空腹時、机の上に書類がうずたかく積まれている時に、自分に何かを要求することはできませんからね。
- 関連づけの戦略を使うこともできます。「今日は3つネットワーキングのメールを書いたら、昼間にシャワーを浴びても良い!」
- 禁止の戦略を使うこともできます。「家に帰ったらもうFacebookは見ないこと。」
- 白紙の戦略を使うこともできるでしょう。「引っ越したばかりの今から、新しいホームオフィスでは、朝に必要な電話をすることから始めよう」
- など、色々です!
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