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【CoachingWorld】コミットメント(約束)を取り付けるための会話:いかにしてコーチングは合意形成の落とし穴を乗り越えるか

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ICF日本支部では、翻訳ボランティア会員の協力を得て、このコーチングワールドの記事をピックアップして日本語に翻訳し、日本の皆様に世界のコーチング状況をお伝えして参ります。これは将来的には会員専用コンテンツになる予定です。こうした活動を御支援いただくために、是非、御入会を御検討ください。

今回は、2013年11月号から、池田宗人氏に翻訳いただきました「コミットメント(約束)を取り付けるための会話」の記事を御紹介します。エグゼクティブコーチング会社CEO兼設立パートナー、ミキー・マクミラン氏の体験に基づく事例紹介です。


CoachingWorld ISSUE8 November 2013
コミットメント(約束)を取り付けるための会話:いかにしてコーチングは合意形成の落とし穴を乗り越えるか

ミキー・マクミラン、マスター認定コーチ(MCC)
ミキーはエグゼクティブコーチング会社であるBlue Mesa GroupのCEO兼設立パートナー。Leadership and Organizational Coachesの為に設計されたACTP(ICFにより承認されたコーチ育成プログラム) Blue Mesa’s Transformational Coaching Programの共同ディレクターでもあり、コロラド州フォートコリンズに拠点をおく。アジア、オーストラリア、北アメリカおよび欧州を含む世界の地域で企業のリーダー、エグゼクティブコーチおよび先生として長年の経験がある。また、Association for Quality and Participation、Business Roundtable、Woman In Technology、The Leadership Investment (旧Women’s Vision Foundation) 等により開催された国際会議のスピーカーとして専門的知識を広めている。

 

ある大企業の営業のシニアバイスプレジデントであるマリアは、絶望的な気持ちでコーチングセッションに臨みました。ブリーフケースには辞職願が用意されていました。新しい職務について6か月。彼女は採用時に自信を持って算段していた結果を出せていませんでした。

マリアは、同僚とアシスタントバイスプレジデント(以下、「アシスタントVP」)である直属の部下が、自分の不満と約束した結果が未達であることの元凶である、と言いました。そのアシスタントVPはマリアの今のポジションを希望していたことがあり、マリアにいわせれば、彼はマリアの就任を恨んでいるらしい。同僚は私を単に無視しているのよ、と彼女は言いました。

具体的なことを尋ねると、マリアは同僚やアシスタントVP等が何をしなかったかを細かく説明しました。彼女が仕事を任せた時、彼女の期待は満たされませんでした。他部署の協力を頼んだ時は、返事がないか、あってもその時はすでに間にあわないかでした。その結果彼女は仕事を終わらせるために、休む暇なく働くことになってしまいました。もしマリアがコミットメントを取り付ける為の会話に、より効果的に対処できていたとしたら、こんな状況は改善できたでしょうか。

コミュニケーションの断絶
マリアの状況はよくあることです。マリアは、他の利害関係者が責任を果たしておらず、それが自分の失敗を引き起こしている、と理解しています。人と人そして組織と組織の間のコミットメントにおける単純な不調が、金銭的損失となり、信頼を壊し、統率のとれた状態を傷つけます。コミットメントにうまく対処する能力の有無が組織の成功を左右します。

勝利の方程式
コミットメントは二人以上の人の間の誓約です。すべての家族、コミュニティや組織はコミットメントで網羅されています。コミットメントに実効性があればあるほど、組織にとっても、相互信頼、顧客満足、そして利益性といった点から実効性があるといえます。

明瞭なコミットメントの形式は、誰が何時までに何をするかを示し、依頼または申し出、交渉、受諾の3つのステップを伴っています。

要請または申し出
コミットメントを取り付ける会話を成功させるためにどのように対処していますか、と質問すると、身構えてしまうクライアントもいます。注意深い質問が鍵となります。マリアの場合コーチは、マリアがまずどのように要請を行ったか、について具体的に尋ねるところからスタートしました。

マリア : 私はアシスタントVPに報告書を出来るだけ早くだすように言いました。一週間後にやっと出てきた時は、私の書いたCEO向け報告書には遅すぎて間に合わなかった。あのアシスタントVPは私のことが嫌いで、私が失敗することを望んでいたのよ。
コーチ : 彼にはどう頼んだのですか。
マリア : 「絶対に提出してね、出来るだけ早く」と言いました。
コーチ : 「絶対に…して」から始まる頼まれ方をされたら、あなたはどう感じますか。
マリア : 私たちは皆、やるべきことはやらなくてはいけない。
コーチ : でも、「絶対…して」と言われたらどう?
マリア : 高圧的…ですね。
コーチ : 言い換えてみると?
マリア : 顧客満足の報告書が出来るだけ早く必要です。
コーチ : 「いつ」について具体的に言えますか。
マリア : 私は顧客満足の報告書が明日の午後5時に要ります。
コーチ : それは「私に出して、出来るだけ早く」と、どう違う?

学習のポイント:
クライアントが自らの求める事項を具体的に示せば示すほど、良い結果が得られます。「私はすぐに使えるミスのない報告書が明日の午後5時までに必要です」の方が、「私は報告書が出来るだけ早く要ります」よりも好ましいと言えます。

交渉
交渉は、片方の人が依頼を受け入れることが出来なかった場合に発生します。マリアがこの点について考えるために、あなたがどうすれば助けになるのか、見てみましょう。

コーチ : もしアシスタントVPが明日の5時までにあなたに報告書を届けることができなかったら、どうでしょう?
マリア(笑い) : クビよ。これは冗談。エー、わからない。どうしてかと尋ねると思う。
コーチ : そうすると何が起こる?
マリア : 彼を理解するための助けになる。
コーチ : それから?
マリア : もしもっともな理由があるなら、私たちは他の方法をあたることもできる。私はたぶん彼に腹をたてないでしょう。
コーチ : あなたは彼に他の方法を伝えたり尋ねたりしますか?
マリア : 私は人に対してはいつも何々をして、と言うだけでした。
コーチ : それでうまくいっている?
マリア(考えながら) : ふー。もし彼が他の方法を見つければ、彼はもっとサポートしてくれたかもしれない。

学習のポイント
交渉においてよりよい結果をもたらす質問がクライアントからでてくるように、クライアントを支援しましょう。

受諾
依頼は受け入れられるかそうでないかのどちらかです。クライアントがどのようにコミットメントを取り付ける会話を締めくくるかによって、相手がどうクライアントを受けとめるかが大きく変わってきます。

コーチ : マリア、あなたはこの会話のあと、自分自身についてどう言えれば良いですか?
マリア : 自分の意見をはっきりと主張する、けれども、思いやりのある人。
コーチ : そのためにはなにができますか?

学習のポイント
クライアントは、自分の思いと反するふるまいをしていることに気づいてびっくりすることがよくあります。思いと行動の連携を支援することにより、困難な情況を上手な関わり合いに変えることができます。

マリアの深い気づき
コーチングを通して、マリアは自分が本当は辞職したくなかったんだと判断し、上手くやりたいという自分に対するコミットメントを再確認しました。彼女は他人と調整し合うことの十分なスキルを持っているわけでも、上手でも無い事が失敗の直接の要因であることに気づきました。いかにしてコミットメントに対処するかを学ぶことにより、彼女は自分がなぜ、そしてどのようにして失敗したかの深い気づきを得ました。新しい行動を学んだほか、彼女は自身と他人に対して以前よりも意識を向けるようになりました。

コーチングを進めるうちに、失敗を恐れることが自分を無力にしていることにマリアは気づきました。マリアを採用した人たちは、彼女の知識と経験に大きな期待をよせ、彼女は望まれた結果をもたらすためにチームに多大なプレッシャーをかけました。しかしこのやり方は、生産性ではなく、不満を高めました。

マリアはコーチングを通して、恐れから学ぶべきことは何か大切なものを失うことを予感することであり、またそれゆえその損失を防いだり、あるいはその損失に備えたりするために動くことであることに気づきました。もしうまく対処することが出来れば、恐れはよりよい結果へと彼女を後押しするものであることを彼女は学びました。彼女は他人が必要であることを知り、また、相互依存に関する気づきが彼女のコミットメントへの対処を変えるきっかけとなりました。最終的に、コミットメントを取り付ける会話により上手く対処し、同僚と打ち解けることにより、マリアはより個人的なレベルでチームとかかわり、ビジョンを伝えることで、関係性は向上しました。チームは全体の為に働くことができるようになりました。

著者:ミキー・マクミラン、マスター認定コーチ(MCC)

ミキーはエグゼクティブコーチング会社であるBlue Mesa GroupのCEO兼設立パートナー。Leadership and Organizational Coachesの為に設計されたACTP(ICFにより承認されたコーチ育成プログラム) Blue Mesa’s Transformational Coaching Programの共同ディレクターでもあり、コロラド州フォートコリンズに拠点をおく。アジア、オーストラリア、北アメリカおよび欧州を含む世界の地域で企業のリーダー、エグゼクティブコーチおよび先生として長年の経験がある。また、Association for Quality and Participation、Business Roundtable、Woman In Technology、The Leadership Investment (旧Women’s Vision Foundation) 等により開催された国際会議のスピーカーとして専門的知識を広めている。

Originally written in English by Micki McMillan.
Coaching World, Issue 8, November 2013, pp.28-29

http://icfcoachingworld.com

翻訳:のびのびパワーコーチング 池田宗人 氏

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