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コーチとクライアントの間に不協和音が生じた時は、勇気をもって中断しよう

あるメッセージが、受信トレイの中で存在感を放っていました。

「HELP(助けてくれ)!」という件名でした。

好奇心をそそられた私がメッセージを開くと、最近新しいリーダー職に就くことになり、コーチングのサポートを求めている男性について簡単に書かれていました。翌日、私たちは電話をかけました。そして、電話での会話の終わりには、その人はクライアントとして登録されることになりました。

彼が意欲的で、目標を持っていて、強い個性を持っていることは明らかでした。彼自身が自分のことを “アルファ・オス(動物などの群れで最上位のオスのこと)”と呼んでいたのか、それとも私が勝手にそう呼んでいたのかは覚えていませんが、いずれにしても、彼の放つエネルギーは、興味深いクライアントになりそうだという存在感を放っていました。面白いことに尻込みしない私は、「私なら対処できる!」と思いました。

それに、当時の私の登録者数は少なかったので、新しいクライアントは歓迎すべきことでした。

さて、これを読んだあなたには、私と同じものが見えていますか?

今あなたは、当時の私が見落としていた(あるいは無視していた)ことが見えているのではないでしょうか。「HELP!」という件名には、すぐに真っ赤な危険信号を出すべきでした。彼は、複数のコーチに相談することもなく、あまりにも早くクライアントとして登録してしまったのです。挑戦的なクライアントであったにせよ、最初から「私なら対処できる!」と考えていたとしたら、それは理想的なマインドセットではありません。更に、クライアントが少ないからといって、それらの警告シグナルを無視するのはどうでしょうか? こんなことをすれば、後で、あなたは狂ったかのように顔面蒼白になる目にあうことでしょう。

3回目のセッションで私は、疑いなく自分たちは合わないと思いました。確かに、その先の希望を感じさせてくれる、小さなつながりや動きも時にはありました。私は「これは、私のコーチとしての弱点を克服するチャンスだ」と考え、自分を納得させました。彼は理由があって私のクライアントなのだから」と。(ここまで読んで、更なる危険信号に気づいていただけましたか?)

私は、彼の方から「うまくいっていない」と言い出してくれることを期待していました。しかし結果的には、私から切り出さなければなりませんでした。彼のコミュニケーションスタイルを考えて、メールでのやり取りにしたのですが、これは正解でした。結局、そこに悪意はなく、教訓を得ただけでした。

しかし、その教訓にもかかわらず、数年後、私はさらに2つのクライアントとのミスマッチに遭遇しました。しかし、そのたびに私はそのことに早く気づき、対話をして関係を完結させることができました。1つのケースでは、クライアントはコーチングよりもコンサルテーションを望んでいました。もう1つのケースでは、クライアントが執着していたビジネスモデルが実行可能ではないと私が考えるようになり、先の見通しが立たなくなってしまいました。

実際のところ、最善の努力をしても、クライアントのミスマッチは起こるものです。それを避けるにはどうしたらいいのでしょうか? その答えは、理想のクライアントを明確に定義すること。強い合意と、お互いが期待しあえる状況を作り上げることです。自暴自棄な「イエス」は言わないこと。あなた自身の直感を、信じてください。積極的に「私たちは合わない」と言えるようになりましょう。

紙の上ではすべてがうまくいっているように見えて、最初は前途有望だったのに、数回のセッションを重ねるうちに、自分たちは相性が悪いと気づいたらどうしますか? 新しいICFコアコンピテンシーモデルでは、「価値ある経験としてコーチング関係を終了するために、クライアントと協力し合っている」ことが求められていると明示されています。実践するには、どうすればいいのでしょうか?

うまくいってない点を特定する

最初に危険信号を受け取ったのはいつでしたか?

それにも拘わらず、前に進んだ根拠は何でしたか?

どこで断絶が生じましたか?

根本的な原因は一度きりの問題ですか、それともパターン化していますか?

あなたに適したものだけを選ぶ

その状況に対して、お互いがどんな役割を果たしたかを考えるのが妥当です。合意が曖昧だったのかもしれませんし、相手のニーズが変わったのかもしれません。良かれと思ってやったことでも、ミスは起こります。パートナーシップが成功のために機能しないと知ることは、クライアントに何を言うべきかを決定するだけでなく、将来のクライアントとの新しい契約のためにも役立ちます。

自分への思いやりを持つ

自分自身を厳しく批判的に見るのはやめましょう。特に、経済的な欠乏から来ていたことがわかった場合はなおさらです。恥ずかしく思う必要はありません。

完全な関係は共に創り上げる

クライアントに、最終的にどのようなパートナーシップを築きたいと考えているのか聞いてみましょう。完成したと感じるためには何が必要ですか? 同じ質問をあなた自身にも問いかけてみましょう。好奇心を持ち続け、新たな学びの場を設け、感謝の気持ちを伝えることで、継続的な価値を提供する機会として、この会話を使いましょう。必要であれば、クライアントの経験を、それがもたらす結果に関わらず、認め、祝福しましょう。

学んだことを振り返る

正しい行動だとわかっていても、自分の能力を疑ってしまうことがあります。実際、私たちはいつでもスキルを育てることができますし、それは理想のクライアントと共に仕事をしている時が最も効果的です。

感謝の心を持つ

クライアントとのミスマッチが起きる10倍以上、あなたのコーチングを幸せなものに出来る出会いがあります。そのすべてに感謝しましょう。時に不協和音を経験することで、共鳴しあえる関係がより輝きます。

豊かで実りあるコーチングのパートナーシップは、お互いの信頼、尊敬、安全性、コミットメントがあってこそ実現します。それを満たさないものには妥協しないでください。あなたとクライアント、どちらもすべてを手に入れる価値があるのですから。

著者:ベス・ビューロウ, PCC

ベス・ビューロウ(PCC)は、健全なコミュニケーション、生産的な対立、意味のあるつながりの文化を創造するリーダーやコミュニティの支援に尽力しています。彼女は、対人コミュニケーションとメンターコーチング、ファシリテーション、調停、紛争解決を専門としています。ベスは、ICFミシガン(https://icfmichigan.org/)において、教育&トレーニングのチャンピオンと、2021年の会長に選ばれました。彼女は、ポッドキャスト「How Can I Say This...」のホストであり、「The Introvert Entrepreneur: Amplify Your Strengths and Create Success on Your Own Terms」(Penguin Random House、2015年11月)の著者でもあります。この本は、Inc.comの「2015年のベストビジネスブック100」に選ばれました。

Originally written in English by Beth Buelow
Coaching World, April 27, 2020, Calling it Quits When There’s Coach-Client Dissonance


https://coachingfederation.org/blog/calling-it-quits-with-client

翻訳:牧野内正雪

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