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「全面開示」時代のコーチング

かつて、プライベートな情報と公開情報の間には、明確な境界線がありました。私たちは、宗教的、政治的、そして私的な事柄を自分たちだけのものにしていました。私たちが何を信じているか、誰を愛しているか、どのように投票しているかを知る資格は、一部の親しい友人や家族を除いてありませんでした。こうした状況が一変したのは、2002年12月、LinkedIn(リンクトイン)の登場と共に現代のソーシャルメディアが誕生したときです。その15ヵ月後にはFacebookが公開され、私たちのプライベートとパブリックな生活は、境界のない、混ざり合った新たなステージへと向かっていきました。

2010年頃、オンライン上の様々なプロフィールを更新することにうんざりしていたクライアントが、セッション中にこんな質問をしてきました。「自分のことを、どのくらいまで公開しないといけないんでしょうか?」

10年前に比べ、ソーシャルメディアはこの問題をより複雑で重要なものにしました。オンライン上で何を共有するかは、意識して慎重に判断しなければ、大変な代償を払うことになります。そして私たちが投稿したものは、誰でも見ることができ、永遠に残る可能性があることを想定しなければなりません。

インフルエンサーやブランドが情報を発信する時代にあって、自分の個性、信念、価値観、ライフスタイルなどは、どこまで公開するのが妥当なのでしょうか? この質問は、自分の弱さをどれだけさらけ出せるかを問うものです。また、ネットワークやクライアントをどれだけ信頼するのかも試されます。自らが知らしめたいパーソナルブランドを、明確にすることが求められるのです。

結局のところ、何を公開するかは100%あなた次第です。私たちの社会契約上、公式には、話したくないことを誰かに話さなければならないというルールは存在しないのですから。

この難問は、非公式な社会契約です。それは、私たちが自らの魂を守る殻を脱ぎ捨てて、正直で無防備な状態になることを求めるものです。フィルターをかけることもなく、そらさず、隠さずに。

これは、コーチにとっては重要な関心事となります。コーチングとは結局、脆弱性を扱う仕事です。私たちはクライアントに、彼らの心の奥底にある考え、希望、そして恐れを私たちに託してもらいます。その見返りとして、私たちは何を提供できるでしょうか?

みんなが触れないようにしている話題、例えば今のソーシャルメディア上での政治的な分断についての発信を考えてみましょう。何を公開すべきかという問題を避けるために、自分の意見は全て隠したいと思うかもしれません。しかし、完全に沈黙するという選択肢は、ほとんどの人にとってあり得ません。私たちは、ネットワークやマーケティングのためにソーシャルメディアに頼っているのですから。

透明性が求められるようになり、ソーシャルメディア上では、政治的・社会的問題に対して企業がどのような立場にあるのかを明らかにするよう求める声が頻繁に聞かれるようになりました。これにより、消費者はより多くの情報に基づいて選択し、自分の価値観に合った企業にお金を使うことができるようになりました。これは全体的に見てポジティブな傾向だと思います。一方で、「キャンセルカルチャー」の台頭も見られます。これは、誰かの行動や価値観に反対したり不快に感じたりする人が、その企業に対してのボイコットや同様の排除を要求するものです。

ほとんどのコーチングビジネスは、国際的なコングロマリットではありません。私たちのソーシャルメディアへの働きかけは大海の一滴でしかありません。ツイッターは、私たちがどの候補者を支持しているかを明らかにしろと叫んでいるわけではありません。私たちはリスクを取って、その影響は小さなものだとは思われますが、自分の意見を共有することを選択できます。しかし、ビジネスを通じて政治的・社会的な発言をするように迫られていると感じる必要はありません。発言したことには責任を持つべきですが、個人的な責任を感じない限り、自分の話をすることは義務ではありません。そして、覚えておいてください。同僚がやっているからといって、あなたもそれに加わらなければならないということはないのです。

私は数年前に、ソーシャルメディアのビジネスページでは意識して中立を保つことを決めました。自分の政治的見解を押し付けることは、コミュニティが私に託してくれた信頼に背くことになります。特定のブランドプロミスに基づいて構築したビジネスプラットフォームを、個人的な意見を広めるための権威付けに利用するのは倫理に反すると思います。

自分の価値観を表現する方法は、他にもたくさんあります。自分が関心のある活動にボランティアや寄付をする。自分の姿、一緒に働く人、提供するものやメッセージなどで、自分の価値観を体現する。目標とは、語るものではなく、示すものです。

宗教、家族構成、心身の健康状態、トラウマ、職歴、業績、失敗談など、公開するかどうか迷っている他の個人情報についても、同じように見極めることが大切です。

境界を決める際には、自分自身に問いかけてみましょう:
1. この情報を公開することは、私のブランド・プロミスに合っているか?
2. この経験、信念、特性は、コーチとしての私を伝えるものになっているか?
3. これを公開することは、私の価値観を明確にするために必要か?
4. これは相手とその人たちのニーズに役立つものか?(より深く探るなら:私自身の動機は何か?)
5. 彼らが私に託した信頼に報いているか?

これらに対するあなた自身の答えを、何を公開すべきか、リスクとリターンのバランスを決定する際の指針として活用してください。あなたができる最善のことは、自分の直感を信じ、自分自身に忠実でいることです。

著者:ベス・ビューロウ, PCC

ベス・ビューロウ(PCC)は、健全なコミュニケーション、生産的な対立、意味のあるつながりの文化を創造するリーダーやコミュニティの支援に尽力しています。彼女は、対人コミュニケーションとメンターコーチング、ファシリテーション、調停、紛争解決を専門としています。ベスは、ICFミシガン(https://icfmichigan.org/)において、教育&トレーニングのチャンピオンと、2021年の会長に選ばれました。彼女は、ポッドキャスト「How Can I Say This...」のホストであり、「The Introvert Entrepreneur: Amplify Your Strengths and Create Success on Your Own Terms」(Penguin Random House、2015年11月)の著者でもあります。この本は、Inc.comの「2015年のベストビジネスブック100」に選ばれました。

Originally written in English by Beth Buelow, PCC
Coaching World, March 3, 2020, Coaching in an Age of Full Disclosure


https://coachingfederation.org/blog/coaching-in-age-of-disclosure

翻訳:牧野内正雪

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