TKI(トーマス – キルマン コンフリクト・モード検査)は、過去40年以上に渡って活用されている「コンフリクト・マネジメント」のツールで、他人との衝突や対立(コンフリクト)の建設的な解決を目指すクライアントをサポートするのに最適なツールです。
ケネス・W・トーマス博士およびラルフ・H・キルマン博士が考案したこのTKIは、「アサーション(自分の主張をどれだけ通すか)」と「協調(相手の意向にどれだけ配慮したか)」という2つの軸から課題解決の行動を分類するツールです。
TKIは、この2つの行動軸から、利害対立を解決する5つのモードを以下のように定義しています。
- 強制 (相手に協力せず、自分の意見を主張する):議論や討論に勝つことを優先して、自分の意見を押し通す
- 協調 (自己主張をしつつ、相手の意向も尊重する): win-winの関係構築を目指し、協力して課題解決を行う
- 妥協(双方が納得できる意見を取り入れる):双方が譲歩して妥協点を見つけ、協力して課題解決を行う
- 回避 (自己主張もしないが、相手の意向にも同意しない):衝突・対立そのものに関わらない
- 服従 (自己主張せず、相手の意向に従う):相手の怒りを鎮めたり、屈服する
すべての人が、この5つの利害対立の解決モードを使い分ける能力を持っているはずですが、現実には、多くの人が自分が使いやすい1~3つのモードに偏り、効果的な使い分けを行っていないように思えます。コンフリクト・マネジメントのコーチングでは、クライアントが自身の行動の悪循環を断ち切って、これまでに使ったことがないモードに挑戦したり、状況に即した効果的なモード選択を行えるようにサポートします。具体的には、クライアントがいつも選択しがちな(または使ったことがない)TKIモードについて自己認識を高めるところから始めます。一旦立ち止まって冷静になったり、状況を分析し、最適なモードを意識的に選択する方法について考えることなどが、コーチングの主なテーマとなります。コーチングを通じてクライアントがワンパターンな条件反射的行動を脱し、より効果的な課題解決力を身に着けることにつながるでしょう。
コーチングセッションでは、TKIの5つの課題解決モードが、利害対立のどの場面において効果的(または逆効果)かクライアントとディスカッションを行います。これは個人セッション、グループセッションを問わず使えます。職場や家庭での実例を取り上げつつ、以下の基本的な質問を使ってクライアントの気づきをうながしていきましょう。
TKI | 効果的なコーチングの質問「5つのモードは、利害対立解決のどのような場面で役立ちましたか?またはどんな場合に役立ちそうですか?」 | 効果的なコーチングの質問「過去にいずれかのモードを使った時、どのようなリスクを感じましたか?またはどんなリスクが想定できるでしょうか?」 |
強制 | 結果を左右するような極めて重要、かつ緊急性の高い決断を行う時、またはその決断を短期間に行う必要がある場合 | 時間に余裕がある時や重要性がそれほど高くない決断にこのモードを使うと、他人からは独裁的なマネージャー/支配的なチームメンバーだと思われ、関係性が悪化する恐れがある |
協調 | ある状況について詳細なディスカッションを行う時間的な余裕があり、かつ関係者全員がwin-winの関係の構築をする意志がある場合 | 時間に制約がある場合、または関係者の一部に協調する意志がない場合にうまくいかない恐れがある |
妥協 | ある状況についてのディスカッションにある程度時間をかけることができ、かつ関係者全員が双方が納得できる解決方法を見出す意志がある場合 | 時間に制約がある場合、または関係者の一部に妥協する意志がない場合にうまくいかない恐れがある |
回避 | 膠着状態が続き、議論を回避して小休止することが望ましい時。または精神的・身体的な幸福などが脅かされている場合 | 個人の幸福が脅かされているような状況ではなく、時間に制約がある中で重要な決断を行う必要がある場合にうまくいかない恐れがある |
服従 | 衝突・対立や自己主張を通じて得られる成果に、それほど大きな重要性や意義がない場合 | このモードのみを繰り返し使うと、他者に利用される恐れがある |
通常、「協調」や「妥協」が最適なモードだと思われがちですが、TKIコーチングでは、それぞれのモードを状況に応じて適切に使い分けることこそが大切だという気づきが生まれます。
クライアントは、一つのモードだけを繰り返し使っていても、様々なタイプの衝突や対立を解決することはできないことや、これまでに使ったことがないモードに挑戦することが自己成長につながることに気づき、感謝します。
また、5つのモードを使い分け、状況に応じた適切なアサーションや協力的な行動を行うことの価値やメリット、そしてクライアント自身の現在の能力に気づくでしょう。
すべての人々がTKIを活用して衝突や対立を建設的に解決することができたとしたら、素晴らしい世の中になると思いませんか?