Human Capital Institute(ヒューマン・キャピタル・インスティテュート)と実施した調査結果から、組織におけるマネジメントスタイルは二分しているという事と、最も効果的なマネジメントスタイルの内容は何かという事が明らかになりました。「権威的」または「指示的」なマネジメントスタイルは、ある特定の時点までは重要であると答えながらも、最も効果的なマネジメントスタイルは「コーチング的」あるいは「支援的」と調査対象者は述べています。メルボルン大学のギャビン・R・スレンプ氏(Gavin R. Slemp)とララ・H・モスマン氏(Lara H. Mossman)が行った世界中の3万人を超える働く人を対象とした調査のメタ分析でも同様の結果が見られました。
二分するマネジメントスタイルにおける対照的なリーダーシップは、それぞれ「支配型リーダー」と「自主性支援型リーダー」に区別されており、スレンプ氏とモスマン氏はこの結果を次のように説明しています。「支配型リーダーシップは、抑制的で息苦しいもの。それに対し、自主性支援型リーダーシップは、従業員が自ら考え行動できる自立した個人として扱い、任せることで力がつきます。常に一つのスタイルを貫くことはできないかもしれませんが、リーダーが従業員の自主性を支援すればするほど彼らの成果は上がると言えるでしょう。」
自主性支援型リーダーシップをなんらかの形で受けた経験がある、と答えた対象者のデータを分析した結果、スレンプ氏とモスマン氏は、このようなリーダーシップは下記を大きく後押ししていると言います:
- 内発的動機づけ
- 職場でのウェルビーイング(心身が健康な状態)
- 仕事に対する満足度
- 業務に対する固い決意や忠誠心
- 業務上のエンゲージメント向上
更には、このようなリーダーシップ下で働く従業員は、バーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しむ可能性が低いことがわかりました。また、これら結果は国民文化に関わらず同様であることが分かりました。
従業員が高いエンゲージメント(一体感)を感じ満足度が高まると、組織自体に恩恵をもたらす可能性が高まります。では、組織あるいはリーダーはどのようにすれば従業員の自主性を支援できるのでしょうか?
この研究から言えることは、従業員の働くことへのモチベーション、パフォーマンス、心理機能にポジティブな影響を与えることに重点的に取り組まなければならないということです。できることは、次のようにいくつもあります:
- 従業員が自ら選択する機会を与え、より重要な決断事項に発言権を与える。
- 自発的な言動を促しながら必要に応じて助言や線引きをする。
- 従業員の持つ観点に興味関心をもち、懸念点には共感的に関わる。
- プロジェクトの取り組みにおいてはその意義や重要性を明確に伝え、そのプロジェクトや目標達成に向け責任をもって取り組めるよう支援する。
- マイクロマネジメントや行き過ぎた制裁を課す、あるいは報酬を与え望ましい言動や結果を引き出す等、自主性を抑制するような言動は避ける。